看護師のスキルアップ資格「慢性疾患看護専門看護師」
私たちがかかる病気はいろいろな種類がありますが、急性疾患と慢性疾患とがあります。
その中でも慢性疾患を患っている人は多く、死亡者のうち6割を占め、国民の医療費の3割程度を占めているといわれています。特に一般でも広く知られる所の糖尿病や高血圧症、高脂血症などの生活習慣病との関連で注目されています。
慢性疾患を抱えた患者に対してどのように医療サービスで対応するかは、国をあげての今後の課題と言っても良いでしょう。慢性疾患の場合、治療の長期化することが多いです。
そのケアをするスタッフは、より高い専門性が要求されます。そのような背景もあって設定された看護師の上級資格として、慢性疾患看護専門看護師があります。
慢性疾患看護専門看護師の資格保有している人は、2015年時点で117名います。合格率ですが、教育機関によっては受験者全員が合格しているなどかなり高いです。
ただしこれは専門的な知識や経験を有している看護師だけに受験資格を与えるシステムをとっているからで、決してハードルが低いわけではないということを理解しておきましょう。
慢性疾患看護専門看護師の資格取得方法・条件
慢性疾患看護専門看護師の認定を担当しているのは、日本看護協会になります。11分野にまたがる専門看護師の認定審査を請け負っています。
受験資格
認定審査を受けるためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
・看護師免許を持っている
・通算で5年以上の実務経験、そのうち3年以上は慢性疾患看護分野における実務経験
・日本看護系大学協議会の定める28もしくは36単位を取得する
最後の条件に関しては、看護系大学院の修士課程を修了する必要があります。ちなみに慢性疾患看護専門看護師の教育課程に対応している教育機関は、日本全国に20カ所用意されています。
教育カリキュラムの中には、通常の講義の他にも演習や実習のような実践的な授業も含まれています。
高齢化と慢性疾患
日本は現在、高齢化社会がどんどん進んでいて、時間の経過とともに日本人人口に占める高齢者の割合はどんどん高くなると見込まれています。高齢者の数が多くなれば、おのずと慢性疾患を抱える人の数も増えてしまいます。
慢性疾患の場合厄介なのは、ゴールの見えないレースになりがちだということです。いつ病気が治るのか、先が見えないです。しかも慢性疾患の中には関知の難しい病気も多く、病気と仲良く付き合っていくことも時は求められます。
慢性疾患と言ってもその病気はいろいろとありますし、患者の訴える症状も多様にわたります。そこでどのような患者の求めにも柔軟に対応できる、慢性疾患看護専門看護師の資格を持った人材がいると医療機関としては大変助かります。
看護師は医療チームの意見調整役として、高いコミュニケーション能力が要求されるといいます。慢性疾患看護専門看護師になると、より高度なレベルで必要とされると思った方が良いでしょう。というのも医療従事者だけでなく、地域の公的機関や福祉関係の人とも連携して患者の対応に当たることもあるからです。
慢性疾患看護専門看護師の資格に興味がある看護師さんへ
慢性疾患看護専門看護師の活躍できる職場ですが、大学病院や総合病院が多いみたいですね。慢性疾患を抱えている患者の中には、長期入院をしている人も多く、入院病棟のある大規模病院で活躍できる可能性が高いからです。
慢性疾患看護専門看護師は患者の対応以外にも、看護をしている家族やケア提供者に対するコンサルタント的な業務を担当することもあります。正しいケアの方法を普段介護している家族や後輩の看護師に対して行う、指導者的な役割もありますね。教育という面に関しては、看護系の大学で指導をしている人もいるみたいですよ。
慢性疾患には、循環器系や呼吸系、神経系などいろいろな疾患があります。そして複数の疾患を併発している患者もたくさんいます。このため慢性疾患看護専門看護師になるためには、幅広い専門的な知識やスキルが求められると思った方が良いですね。