看護師のスキルアップ資格「緩和ケア認定看護師」
病院は少し前まで、患者の病気を治すことに集中してケアの行われる傾向が見られました。しかし治療だけでなく、その人らしい生活が送れるように少しでもお手伝いすることも重要な任務であるという風潮が広がりつつあります。
そこで注目されているのが、緩和ケアです。
緩和ケアはまず、患者の痛みをはじめとした苦痛を取り除く役割があります。苦痛を取り除くのにプラスして、その人の生活の質をできるだけ落とすことなく生きていくためにどう対処すればいいのかを考えて身の回りの世話をする役割もあります。
患者だけでなく、家族に対するケアも重要で、よりメンタルな部分の看護技術が要求されます。その緩和ケアに関する専門的な知識・スキルを持った人に与えられる上級看護師資格に、緩和ケア認定看護師があります。
緩和ケア認定看護師は2015年の時点で日本全国に1851人資格保有者がいます。病棟のあるある程度の規模の病院で勤務しているケースが多いです。
緩和ケア認定看護師になるためには、認定審査を受けて合格する必要があります。合格率を見てみると例年、90%を超えています。
ただし以下で紹介しますが、認定審査を受ける条件はかなり厳しく設定されています。決して資格取得が楽なわけではないということを理解しておきましょう。
緩和ケア認定看護師の資格取得方法・条件
日本看護協会が、認定審査を実施しています。認定看護師の他にも認定看護管理者や専門看護師など、上級資格の認定を実施して、看護師の全体的なレベルアップを行っています。
受験するまでのロードマップ
まず看護師免許を取得してから5年以上の実務経験が必要です。そして緩和ケアに関する実務経験者を対象としていて、3年以上の緩和ケアフィールドにおける実務経験を有していることも前提条件となります。
5例以上の緩和ケアを受けている患者の看護経験が必要です。病院以外でも在宅ケアで緩和ケアの担当をしている場合も、実務経験としてカウントすることが可能です。
この2つの条件をクリアできれば、緩和ケア認定看護師教育機関で専門の勉強をします。約半年間の勉強期間が設けられていて、その間仕事をしている人は休職する形になります。
また近くに緩和ケア認定看護師の専門課程を実施している教育機関がないかもしれません。その場合には半年間、別の地方に引っ越すことも検討する必要があります。
ここまでクリアできれば、認定審査を受けられます。筆記試験で実施され、一定以上の点数を獲得できれば、緩和ケア認定看護師の資格を得られます。
医学が進歩しても必要なジャンル
医療スキルはどんどん進歩しています。たとえば少し前までがんというと、不治の病というイメージが世間にも広く浸透していたはずです。しかしがんもかなりの領域で完治が可能になりつつあります。
昔ならだめだったものが治療できる、手術をしなければだめだったものが、放射線や抗がん剤を使った治療で対応できるなど、医学の進歩はかなりのものです。
しかしそれでも進行した病気に関して、なすすべもないケースも未だあります。このような手の施しようのない患者に対して、人間の尊厳を維持しながらその人らしい最期を全うするためのお手伝いをする存在として、緩和ケア認定看護師は必要になるでしょう。
緩和ケア認定看護師の資格に興味がある看護師さんへ
緩和ケア認定看護師の資格を持っている人の職場を見てみると、80%以上は病院勤務をしていますね。高度な治療機器などを持っている大規模病院に勤務する人が多いような感じがします。
「緩和ケア科」のような専門の診療科目を設置しているところもあるくらいです。
しかし今後はもしかすると、在宅ケア分野で勤務する看護師が増えるかもしれませんね。症状の落ち着いている患者は、自宅療養してもらう動きが強まっているからです。
また「最期くらいは自分の住み慣れた家で迎えたい」と願う人も多いみたいです。実際このような在宅ケアの分野で仕事をしている緩和ケア認定看護師の有資格者の数も、日本全国で増えているみたいですよ。