看護師のスキルアップ資格「摂食・嚥下障害看護認定看護師」
私たちは普段何気なく食べ物や飲み物を口にしているでしょう。しかし高齢者になってとか病気にかかって、能力がダウンしてしまうと食べ物や飲み物を飲みこむという行為そのものが困難になってしまうケースも見られます。
もしも適切に嚥下できなくなると、窒息したり誤嚥性肺炎といった病気を引き起こしたりして危険です。だからと言って食べ物や飲み物を口にしなくなれば、栄養失調や脱水症状を引き起こしかねません。そこで嚥下機能に障害を抱えている人のケアを行う専門家として、摂食・嚥下障害看護認定看護師という資格があります。
嚥下機能の低下している患者には、嚥下訓練を施します。摂食・嚥下障害看護認定看護師は専門的知識を生かして、この嚥下訓練プログラムをそれぞれの患者に合わせて策定します。
また普段食べ物や飲み物の介助は、家族が担当するケースも多くあります。患者が苦しまないように、家族に対して適切な食べ物・飲み物の与え方をアドバイスするのも摂食・嚥下障害看護認定看護師の仕事です。
摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格取得者は日本全国に2015年までに595名います。病院勤務をしている人が多く、患者の介助などを担当していることがうかがえます。
摂食・嚥下障害看護認定看護師になるためには後で紹介する受験資格を満たし、認定審査を受ける必要があります。認定審査の合格率は例年、90%台で推移しています。ただし受験資格を得るためには、専門的な教育を受ける必要があり、資格のハードルが決して低いわけではありません。
摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格取得方法・条件
摂食・嚥下障害看護認定看護師の認定を行っているのは、日本看護協会です。
受験資格を得るには
まず看護師免許を取得して、5年以上の実務経験を有する必要があります。そのうちの3年以上は摂食・嚥下障害看護分野での実務経験となります。ただし実務経験の期間は連続である必要はなく、通算でクリアしていれば問題はありません。
摂食・嚥下障害分野の看護経験といいますが、このような問題を抱えた患者の多い保健医療福祉施設における看護経験となります。ちなみに在宅ケアであっても実務経験としてカウントすることは可能です。
その上で摂食・嚥下障害看護認定看護師教育機関が日本全国にいくつかありますから、そこで615時間以上のカリキュラムを受講する必要があります。期間にして半年以上です。地域によっては近くに教育機関のないケースも考えられます。その場合には半年間、どこかに引っ越して勉強する形になるかもしれません。
これだけの条件をクリアすれば、受験資格を手にできます。摂食・嚥下障害看護認定看護師の認定審査は筆記試験のよって実施され、合格すれば晴れて摂食・嚥下障害看護認定看護師として活動できます。
高齢化の中で欠かせない資格
高齢化社会は今後ますます進むと見られています。高齢者になると筋力低下などで、嚥下障害を抱える人の割合がどうしても大きくなります。
高齢者の中には、いつまでも口から食べ物・飲み物を摂取したいという気持ちを持っているはずです。QOLを維持するためにも、なるべく口から食べ物を摂取することも求められます。そうなると今後ますます摂食・嚥下障害看護認定看護師の存在感は高まってくることが予想されます。
まだ数百名程度と、決して資格保有者は十分ではありません。売り手市場で推移することは十分予測できますので、キャリアアップや待遇改善のために資格取得しておいても良いでしょう。
摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格に興味がある看護師さんへ
摂食・嚥下障害看護認定看護師の活躍している職場ですが、その大半が病院です。そしてその8割以上の方が入院病棟で勤務しているみたいです。
がん拠点病院や救急センター、特定機能病院など高度な医療施設で活躍している人が多いです。そのような最先端の医療環境で仕事ができれば、看護師としてさらに高められると思います。
脳神経や筋骨格系、呼吸系、栄養などの広範な知識が必要な資格ですから、病院にとっても重宝する人材といえますね。