看護師のスキルアップ資格「家族支援専門看護師」
専門看護師の11の分野の一つに、家族支援があります。病気の治療で患者にかかる負担も大きいですが、世話をする家族の精神的・肉体的な負担は大きいです。その家族に対するケアに関して専門的な知識・スキルを持った看護師に資格が与えられます。
患者の家族へのサポートを行ことで、患者の回復を促進するとか、家族の負担を少しでも軽減できることを目的とします。また長期入院になると、患者と家族でいさかいが生じる可能性もあります。その場合には、彼らの間に立って問題の原因を追究し、解決していく役割も担います。
家族支援専門看護師の資格保有者は、2015年までに37人います。たいていの資格保有者が病院で勤務しています。
家族支援専門看護師の認定審査を受けるためには、いくつか条件をクリアする必要があります。このため選ばれた人しか受験できず、合格率は90%くらいで推移しています。
家族支援専門看護師の資格取得方法・条件
家族支援専門看護師の認定は日本看護協会が行っています。
受験資格
認定審査を受けるためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
・看護師の免許を有していること
・日本看護系大学協議会専門看護師教育課程の所定の科目単位を取得していること
・看護師として通算5年以上の実務経験があり、3年以上は家族支援分野の実務研修を受けていること
ちなみに2つの条件ですが、看護系大学院の修士課程を修了していることと同義だと思ってください。
試験の概要
家族支援専門看護師の試験ですが、年に1回実施されています。書類審査と筆記試験が実施され、この両方とも合格する必要があります。
医療の現場における家族のケアの重要性
これまで医療ケアの世界では患者の治療が優先順位の圧倒的なトップとされていました。ところが患者の看病をする家族のケアに関しては後回しとか軽視される傾向がありました。
しかし最近になって、家族の支援も本格的に実施することも重要性が業界でも認識されるようになりました。
このため、家族支援の専門的な知識を持っている看護師に対する需要は今後どんどん高まることが予想されています。家族支援専門看護師は2008年に制定された分野で、専門看護師の中でも比較的新しいです。このため、まだ資格取得している人は少ないです。よって売り手市場でしばらく推移する可能性があります。
資格取得を検討しているのであれば、計画を立てることが大事です。先に紹介した3つの要件を満たすにはどうすればいいかを考えましょう。
家族支援専門看護師の資格に興味がある看護師さんへ
入院している家族がいると、看病する側の負担も大きくなります。このため家族支援専門看護師はクリニックというよりも、大学病院や地域の中核になっているような大規模病院で勤務している人が多いです。
特定の診療科目に勤務するというよりも、リンクナースとして横断的に活躍している人が多いですから、柔軟に対応できる能力があった方が良いと思いますよ。
病院の中には家族のケアを重視しているところもあります。この場合看病に疲れた家族が相談できるような窓口を設けているケースもあります。このような相談窓口に常駐して、来た家族の相談に乗ります。
患者への看護と家族へのケアとは別物です。その意味では専門看護師の資格を取得するために勉強をすれば、視野を広げることができると思います。だからキャリアアップやスキルアップを希望する看護師が取得を目指してもいいかもしれません。
家族支援専門看護師の役割は多岐にわたります。家族の健康をチェックするとか、患者と家族の関係性に問題がある場合にはその本質を見つけ、よりよい関係性を築くにはどうすればいいかなどいろいろなことを考える必要があります。
家族に対するケアのスキルを獲得することはもちろんですが、そのほかにも患者に関する症状への知識、治療法や看護技術もマスターする必要があります。ですから資格取得のためには、十分時間をとった方が良いと思いますよ。