看護師のスキルアップ資格「性暴力被害者支援看護職」
性暴力の被害者が医療機関で治療を受けることもあります。しかし、ここで問題になるのが、二次被害です。医療スタッフの何気ない一言で患者が精神的に深く傷ついてしまうこともあり得ます。
このような二次被害を防ぎ、なるべく被害者の受けたダメージを癒すために対応する能力のある人のための資格が性暴力被害者支援看護職です。
性暴力被害者支援看護職は、北米で始められた制度で研修用のプログラムが、6か国・約650カ所で実施されています。日本でも民間団体の一部で導入が進められていますが、知名度は決して高くはありません。
2000年から性暴力被害者支援看護職の養成講座がスタートしましたが、2013年春の時点で日本全国に300名程度の受講者がいます。
性暴力被害者支援看護職はいわゆるほかの資格のような認定試験は実施されていません。1年間に40時間の講座を受講することが条件で、条件をクリアすると修了生として活躍が可能です。
性暴力被害者支援看護職の資格取得方法・条件
日本においては、性暴力被害者支援看護職の人的資格は2015年の段階でまだ確立されていません。
女性の安全と健康のための支援教育センターというところで、カナダのブリティッシュコロンビア州で実施されている、性暴力被害者支援看護職の教育プログラムをベースにしたプログラムを実施しています。
プログラムの受講条件
性暴力被害者支援看護職の養成講座を受講できるのは、まず女性です。
その上で以下のいずれかの資格を取得している人であれば、だれでも受講可能です。
・看護師
・助産師
・保健師
講座内容
性暴力の実態を理解し、性暴力の個人に及ぼしうる影響や被害に遭った人への支援の基本原則を理解することが目的で実施されます。
その他にも、さまざまなほかの支援者と協力しながらケアできる支援者自身の安全と健康を維持することができるように育成します。
1年間に40時間の講義を受講しないといけません。そこで看護師として仕事をしている人は、スケジュールの調整を慎重に行う必要があります。休日もしっかり確保しながら、健康面もケアしつつ仕事と勉強の両立を目指さないといけません。
看護師として性暴力被害者の心強い味方に
2012年度の強姦件数は1240件、強制わいせつ件数は7263件あります。ここ10年間の推移を見てみると減少傾向にありますが、この数字だけを見ているだけでは性暴力の実態は理解できません。
性暴力の被害者はなかなか被害届を出さない傾向が見られます。あるデータによると、被害を届け出る女性は被害者全体の13%強といわれているほどです。
つまりこの数字の何倍もの被害者がいる可能性も考えられるわけです。このような傷ついた女性のケアをする人材が求められています。
性暴力の被害を受けた人の中には、病院に担ぎ込まれるケースもあります。その時に性暴力被害者支援看護職のような専門家がいてくれれば、被害者にとって救いになるはずです。
性暴力の被害に遭っている女性は決して少なくありません。この人たちの心の声を聴くことも、普段患者の面倒を見る看護師にとってとても必要なことです。
性暴力被害者支援看護職の資格に興味がある看護師さんへ
この資格は、まだ身分が確立されているとは言えません。病院で勤務していても、通常の業務の延長線上でケアをする形が多いです。
しかし、今後は需要の高まってくることも十分予想できます。
すでに公費を使って、性暴力に関する相談センターを設置している所や、医療機関と警察が連携して性暴力の被害を埋もれさせないためのシステムが整備されつつあります。
今後、性暴力被害者支援看護職として活躍できる場も広がってくることでしょう。
性暴力被害者支援看護職として被害の実態などを聞くのは、精神的なタフさが必要です。時にはひどい仕打ちを受けた被害者の話を聞くこともあるかもしれません。その時感情的にならずに、冷静に分析を行うためには精神的な強さが要求されます。