看護師のスキルアップ資格「精神対話士」
うつ病をはじめとして、世間一般の間でも心の病の存在が広く認知されるようになりました。
このような心の病で精神的に落ち込んでしまったとか、生きる気力を失った人たちが前向きになれるようにコミュニケーションをとる存在に、精神対話士があります。
看護師の場合、患者と常日頃から頻繁に接触します。患者の中には病気やけがの闘病に疲れてしまっている人、自分は本当に治るのか不安を抱えている人など、精神面のコンディションの悪化している人もたくさんいます。そのような人の心の支えになるため、精神対話士の資格取得を目指す人も多いです。
精神対話士の資格保有者数は公表されていません。しかし若いのは高校生から、中には80歳を超えた高齢者で資格保有者もいます。老若男女、誰でもチャレンジできる資格です。
ただし精神対話士の試験の難易度はかなり高いと思うべきです。合格率は年々15%程度で推移しています。ですからしっかりとした試験対策を行わないと、なかなか合格できないことにもなりかねません。
精神対話士の資格取得方法・条件
精神対話士はメンタルケア協会という財団法人が主催しています。1993年に慶應義塾大学の医学部出身の医者たちによって設立されました。
受験資格
年齢や性別、職業に関係なくだれでも受験は可能です。
ただし2つだけ条件があって、メンタルケア協会の主催するメンタルケア・スペシャリスト養成講座の基礎課程・実践課程を修了することです。その上で協会の主催する派遣業務への参加を希望すれば、試験を受けられます。
メンタルケア・スペシャリスト講座の基礎課程・実践課程を修了するにあたって、レポートの提出が義務付けられています。レポートに合格しないと受験資格が得られませんが、80%の受講者が合格していますから、それほどハードルは高くありません。
試験内容
実践課程の修了後に試験が実施されます。10名前後が参加する集団面接と個人面接で考査が実施されます。ちなみに先ほど紹介した実践課程を受講した際に提出が義務付けられているレポートも審査対象になります。
筆記試験はなく、試験のおよそ1か月後に合否の通知が行きます。
資格取得後も、研修に参加するなど研鑽することが求められます。また5年ごとに更新手続きを受けないといけません。
カウンセラーとはどう違う?
このようなメンタル面のケアを行う資格は、他にもいろいろなものがあります。おそらくメジャーな資格として、臨床心理士や心理カウンセラーなどがよく知られているでしょう。
臨床心理士と心理カウンセラーとは、精神対話士は少しアプローチが異なります。
臨床心理士や心理カウンセラーの場合、精神的な疾患に対して医療的な治療でアプローチする方法を取ります。しかし、精神対話士の場合、治療という観念で患者に接する要素はあまりありません。あくまでも対話を通じて、患者の抱える孤独感や不安感などの心の問題を改善する方法を取ります。
その意味では、看護師の取得すべき資格といえます。人の心に寄り添って、サポートしたり励ましたりすることで患者の気持ちを前向きにさせるのが役割だからです。患者のそばで身の回りの世話を行う看護師にとって、必要な知識であり資格といえます。
精神対話士の資格を取得すれば、待遇の面でもプラスに働くようです。能力給に上乗せされることもあり、給料アップを希望する人も資格取得を目指す価値があるといえます。
精神対話士の資格に興味がある看護師さんへ
精神対話士は看護師が病院などで看護活動をする時に生かせるスキルがたくさん含まれています。病院の他にも、心のケアやカウンセリングが必要な所で活躍できるでしょう。
企業や学校などは仕事や勉学のプレッシャーや人間関係のはざまに立って、精神的に苦しんでいる人もいます。また被災地でも精神対話士は必要とされます。
高齢者の増加に伴い、認知症を患った人へのメンタルケアが注目されています。高齢者施設や自宅療養している高齢者のケアのために、精神対話士の役割は今後ますます重要になるかもしれません。