看護師のスキルアップ資格「体外循環技術認定士」
心臓手術を行うときに、開心術と呼ばれる方法が採用される場合があります。この場合、血液を大静脈から人工心肺装置につないで酸素を血液に供給し、大動脈に戻すバイパスが必要になります。
その間心臓の拍動を止めてしまって、心臓内部の処置を施すわけです。血液が体の外を巡る形になりますから、体外循環と呼ばれます。
体外循環技術認定士は人工心肺をはじめとして、体外循環装置を操作するだけの専門的な知識やスキルを持っている人に認められる資格です。心臓外科に勤務している、オペ室看護師になりたいと思っている人は取得すべき資格といえます。
体外循環技術認定士の資格保有者数は、主催団体では公表していません。しかし1000人程度日本全国にいるとみられています。
体外循環技術認定士の合格率は非常に高いです。毎年90%台で推移しているといいますから、受験者のほとんどが合格するといえます。ただし受験資格を厳選しているため、合格率が高いわけで、決して難易度が低いわけではないです。
体外循環技術認定士の資格取得方法・条件
体外循環技術認定士は、日本人工臓器学会と日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環技術医学会の4つの学会で認定されています。
受験資格・試験内容
上で紹介した学会の中で、日本体外循環技術医学会と日本人工臓器学会の正会員として登録する必要があります。
その上で心臓血管外科専門医認定機構が認定する施設で、看護師の場合3年以上の体外循環に関する実務経験が必要です。
ちなみに准看護師の場合高卒で4年以上、中卒だと5年以上の経験が必要です。
さらに以下の4つの条件を満たすことが求められます。
・日本体外循環技術医学会教育セミナーカリキュラムで所定の単位を取得する
・日本人工臓器学会教育セミナーの1回以上の受講経験
・認定委員会の定める日本胸部外科学会や日本心臓血管外科学会、日本人工臓器学会の体外循環セミナーで10ポイント以上獲得
・体外循環の操作経験が30症例以上
このすべての条件をクリアして初めて受験資格が得られます。ちなみに試験は毎年7月ごろ、筆記試験と口答試験の2段階で実施されます。
高度な医療機器を取り扱う体外循環技術認定士のニーズ
体外循環技術認定士が操作をする体外循環システムは、日々医学の進歩によってどんどん進化しています。体外循環をより安全に着実に行えるようになった半面、システムが複雑になっているため、高度な操作技術が要求されます。
そこで体外循環技術認定士の資格を持った看護師は、手術室の中では貴重な戦力となりえます。
医師や看護師不足の状況が、特に地方では深刻です。しかも今後超高齢化社会がますます進行することで、高齢の患者の数もますます増えることが予想されています。高齢者の中には、心臓を患う人も出てくるでしょうから、体外循環技術認定士は即戦力として注目されます。
体外循環技術認定士は心臓手術が行われる所が職場になりますから、総合病院のような大規模病院が就職先になります。このため、年収500万円程度稼ぐ看護師は決して珍しくありません。
年収アップを狙うのであれば、体外循環技術認定士プラス臨床工学技士の資格も取得しておくと良いでしょう。活躍できるフィールドが広がりますし、年収500万円を超える稼ぎが得られるかもしれません。
体外循環技術認定士の資格に興味がある看護師さんへ
心臓外科の世界で看護師のキャリアアップを希望するのであれば、体外循環技術認定士の資格は取得しておいて損はないと思いますよ。心臓外科手術のスペシャリストとして公に認定されていることの証明になるからです。
心臓手術を受ける患者は、生命維持装置を使ってその後しばらく経過観察する必要のあるケースも少なくありません。そうなると臨床工学技士の資格も併せ持っていると、全般にわたる患者のケアのできる看護師としてますます高い評価されますよ。
体外循環技術認定士になるのであれば、更新制となっている点に注意ですね。5年に一回の更新手続きをしないと、資格を失ってしまいますから気を付けてくださいね。